巨大な代ゼミが凋落した理由 その2
代ゼミには、派手なパフォーマンスでたくさんの生徒を集めるスター講師がいる一方、そのようなことに興味を示さず、黙々と教えるべきことを教えている、いわば、職人的な講師もいました。
代ゼミも全盛期には東大合格者を数百名出していたことがありましたが、東大を始めとする難関大学に一定数の合格者を出していたのは、それらの職人的な講師でした。
それらの職人的な講師たちは、派手なパフォーマンスをするスター講師を苦々しく思っているようでした。
「あいつらは派手なパフォーマンスで人を集めてるからいいんだろうけど、あんなので集まってくる奴らはどうせいい大学なんか受からない。結局、代ゼミはああいう講師がいるってことで、できる生徒からは相手にされなくなる。」
私は、しばしば職人的な講師がこのような苦言を呈しているのを耳にしました。
確かに、派手なパフォーマンスをするスター講師の授業は、勉強ができない生徒、やる気が出ない生徒にとっては一種の救いなのでしょう。
そもそも勉強する気のない生徒には、スター講師が派手なパフォーマンスをしてくれたり、青春時代の楽しい思い出を語ってくれるからこそ「代ゼミに来ればなんか面白いものが見れそう!」と思えるのであり、とりあえず授業に出てくるきっかけになるのです。
ですが、やる気がある生徒にそんなパフォーマンスは必要ありません。
すでにやる気がある生徒にとっては塾や予備校とは勉強するところであり、学校で教わっている以上の内容を分かりやすく教えてくれるからこそ通ってくるのです。
そういう生徒にとっては、いわば子供だましのようなパフォーマンスや必要以上の雑談は「ウザい」としか思えないのでしょう。
実際、派手なパフォーマンス講師が勉強とは無関係の雑談を延々としていることに我慢できなくなった生徒が授業を途中退席しようとしてトラブルが起きたこともありました。
雑談を延々としていた当の講師は「なんでこんな面白い話を聞かないんだ!人が話しをしている最中に出ていくなんて失礼じゃないか!」といって呼び止めたのですが、その生徒は無視して出ていこうとしました。生徒の態度に激高した講師が追いかけて行ってその生徒をたたいてしまったのです。
そんなトラブルが起きることも代ゼミでは珍しくありませんでした。
そんなこともあり、代ゼミは難関大学を目指す生徒からは一段下に見られる予備校になっていったのです。
かなり前から少子化が進み、現在私立大学の4割は定員割れになっています。つまり、名前を書けば受かる大学が4割なのです。
かつて代ゼミが派手なパフォーマンス講師で集めていた、勉強のできない、やる気のない生徒たちは、代ゼミに来る必要はなくなりました。だって、名前を書けば私立大学の4割は受かるのですから。
あんなにも勢いがあった代ゼミがここまで凋落したのは時代の必然だったのです。